あの時も  あの時も。




いつだって傍にいてくれたのは貴方だった。



















「帰るのですか?」

「あぁ。」








ここはバチカルの港。






なんだか永遠の別れの様な気がした。


そんなはずないのに 
なのにいつも居てくれた人が居ないのは寂しくて
なんて言葉をかければ良いのか分からない。




いつも思う。
ガイがここに来てマルクトに帰る時。




















何故だか分かっている。

辛い時居てくれたのは貴方だった。

寝れない夜
眠れるまで起きて居てくれた。

悩み事があったとき
まるで自分の事のように一緒に考えてくれた。

お父様が本当のお父様じゃないって言ったときも
貴方は私の居場所を作ってくれると約束してくれた。

アッシュのことで悩んでいたときも
今までと変わらない優しい笑顔で接してくれた。







離れてから気付くなんて愚かだと思いますわ。
いつもされるのが当たり前。
そうやって優しい言葉を掛けてもらうのが当たり前になっていて。

いざいなくなったら隣に居て欲しくてたまらない。



「どうしたんだ?そんな悲しそうな顔して。
可愛いナタリア殿下のお顔が台無しですよ?」
「なっなんでもないですわ。」
「・・・。」




またいえないの。

何回も言おうと思った。
でも迷惑になるのが嫌だった。
彼は仕事でここに来ているんですもの。
傍に居てと言えればどんなに楽なんでしょう。




急にガイが真剣な顔して私の顔を覗いた。

「なんか言いたい事あるのか?
何でも聞くよ?」
「ほっ本当に何でもないんです。
ただガイは今度いつ来るのかな−って・・・。」


ガイは嬉しそうに微笑む。
そしてまた真剣な顔をして

「今度は長めにいようと思うよ。ナタリアと一緒にいたいしね。
・・・だめかな?」


傍に居て欲しいなんて言わないのに分かってくれる。

甘えても良いんですか?
ずっと傍に居てくれるのですか?
私の事置いて行きませんか?




「どうしたっ??俺なんか変な事言ったかっ??」

これまでの気持ちが堰を切ったかのように溢れた。

「・・・っ・・・。」
「どっ何処か休める場所に行こうか。
そうだな・・そこのカフェにでも入ろうか。」



少し慌てた様子で言う。
さっきからチラチラ見られているからだろう。




丁度船の時間がきたらしい。
本当はガイも乗るはずだったけど
そんなことはお構いなしのようだった。

うなずくと彼は自分の荷物を持って行こうとした
が、私の顔を見て立ち止まる。
そんなにひどい顔なのかしらと思い顔を隠すと
彼は言った。

「やはり姫様はその涙に濡れたお美しいお顔を見せたくないらしい。
・・・ちょっといいかい?」

何をするのかと思い見ていたらガイは私を抱きよせた。
そう街中の恋人達のような。
私の顔が隠れるようになっているしとても心地良かった。
だけど目立ちすぎはしないだろうか。
私は皇女、彼はファブレ家の使用人として認知する人もいればマルクトの貴族とも認知する人が居る。

彼は考えた結果こうなったのだろう。
彼に任せますわ。











「ナタリア。どうして泣き出したんだ?
そんなに俺が嫌だったかな?

すべて 話してくれないか?」



私は思っていた事を全て話した。



寂しくて辛くて支えて欲しくて。

やっぱり大切で傍に居て欲しいのは貴方だって。




虫の良すぎる話だ。
軽蔑されるに決まってる。
隣で支えてくれる人がいないからいて欲しいだなんて。


「・・・いつも支えていると思っていたんだけどなぁ。
傍にいなくてもずっと・・・ね。」


街中の風が私の頬を撫でる。
私は何を勘違いしていたのだろう。

私は大切な事を忘れていた。


「遠くにいって欲しくないのなら行かないよ・・・と言いたいが
まだまだそれは先の話になる。
君の婚約者がいなくなった今俺はマルクトで君にふさわしい人を探しているからね。
そんな俺が今ナタリアといたいと言ったら国際問題になるかもな。」

「私は断わり続けますわ。
私の婚約者はもう決まっています。」

忘れていた事それは・・・。

何処にいたってこの気持ちは変わらない。
彼もそれを証明してくれているじゃない。






これからも

いつだって傍にいてくれるのは貴方。






あとがき
ルークが帰ってくる前後なお話。
二人の中でルークはナタリアではなくティアを選ぶというのができている状況での話です。

この二人の結婚までの話とか書きたいなぁと思っている今日この頃。
この話自体もあまあまではないんですがそういうのも書きたい・・・。
ガイナタ妄想は尽きません。
ただ言葉にし辛い。[ヲィ