貴方が考えてる事なんて分かりはしない。
だって「他人」なんでしょ?
言ってくれなくちゃ、わかりっこないのよ。
私は、この想いを貴方のためにじゃなく、私のために言う。
私だけをまっすぐ見て、本当の事を言ってよ。








いつも傍にいて励ましてくれた彼と、別れるって思ったとき。
すごく悲しかった。
この気持ちの正体はわかってる。
恋。
でも、いなくなるって言うから、忘れようって思った。
案外、うまくいった。
毎日忙しいし、しなくちゃいけない事だらけの毎日。
そんな事考えてる暇なんてなかった。

なのに、どうして戻ってくるの?
おかしいでしょ。
こんな思いした事ないのに、あなたがはじめてだったのに。



失恋だったんだって割り切ったのに。






「どうしたのかな?店主。ジトーッと我の事を見おって。
なにか変な事でもしたかな?」
いるだけで充分変なのよ。
気、持たせておいて、別れるときが来るなんて当たり前の事を言って遠回しに私を拒んだくせに。
何のこのこ帰ってくるのよ。



永遠なんてない、ずっと一緒にいれるなんて思っちゃいない。
後悔したくない、ずっと引きずるのなんていうのはもっと嫌。
ねぇ、貴方は何を恐れているの?
別れ?傷つく事?



拒絶をするならもっと、わかりやすく。
受け入れてくれるならもっと、やさしく。



「あのさ、セイロン。ちゃんと聞いて。はぐらかさないでね。」
「お・・・おお。」

「私は貴方の事が好き。」
どんな顔してるかなんて、気にしてられなかった。
「貴方が好きなの。」
どんどん溢れる涙。

「我は、いなくなってしまうやもしれないのだよ、店主殿。
そんな我の事を思ってくれるのは嬉しいが・・・。」
困ったような、顔。
はっきりしない返答。
もっと、はっきりしてよ。
いつものように、堂々と、能天気に。
それが私の好きになったセイロン。

「・・・それで?」
「・・・へ?」
「嬉しいが・・・のつづきよ。
いってくれなくちゃ、分からないじゃない。セイロンの気持ちがわからないじゃない。」
「しかし・・・。」
「しかしってなに?はっきりしてよ、もっと。
この際いうけどさ、別れの事なんて考えたって先に進めないのよ?
私の事、嫌ならはっきりいえばいいじゃない。
そういう風に遠回しにいったって伝わらないよ。
貴方の気持ち、ちゃんと聞かせてよ。」


しばらく見つめあう。
真剣なセイロンの顔。
のくせに、何もいわない。





「・・・もういいよ。もういい。」
もう何でもよかった。
この場から逃げたかった。
部屋に戻ろうとすると、セイロンは呼び止めた。

「フェア!逃げるでない。」
「・・・なによ。逃げてるのはあんたじゃない!」
「話すから、だから・・・聞いてくれるか?」



「多分我は、別れを恐れていたんだろうな。
想いを伝えるよりも、いい思い出のままにしたかったんだ。
しかし、間違っておったようだなぁ、フェア。そなたを泣かしてしまうとは計算外だった。」
「・・・で?」
「その・・・つまりだ。我はフェアの事が大好きだが、傷つく事を恐れた情けない男なのだよ。」

そのしゅんとした顔が可愛くて、ぎゅっと抱き締めた。
「!」
「もう・・・セイロンの馬鹿!!セイロンが情けないのなんかずっと前から知ってるよ。
なんで、こんなに馬鹿なの?本当に・・・ッ!」
「泣きやんでくれ、フェア。我が馬鹿なのは知っておるのだろう?」
いつのまにか私の方が抱き締められてた。
頭をポンポンとやさしく叩く仕草は、あったかくて心地いい。
「・・・じゃあさ、お願いきいてくれる?」
「あぁ、聞くとも。」








言ってくれなくちゃ、わかりっこない。
彼も、この想いを私のためにじゃなく、彼のためにいって欲しい。





「私だけをまっすぐ見て、愛してるって言って。」







FIN








あとがき
ED後、初めて書いたセイフェア。
切ない方向にもっていきたいセイロンにお答えしました。
だってさ、あの人別れの時がどうのこうのってEDでもいってたし、こいつはって思ったんだもの、
好きなのに割り切れちゃうのは大人であるからなんだろうなって思うけど。
永遠なんてないからってフェアちゃんにいわせるのも切ない。
真剣なセイフェアは切ない。はたしてラブラブなんて書けるのか。