悲しく雨が降る空だった。







「貴方が傷つきたくないのなら、早く諦めて。

彼女を傷つけたくないのなら、早く想いを伝えて。」



諦めたボクが、悲しいから

だからお願い。





泣いている空






曇っていた空。
二人で、部屋を掃除していた。
泊り客はいまだに少ないけど、毎日掃除をしないと埃はたまっていく一方だ。

二人でいる事は少なかった。
・・・フェアがいるから。
フェアはセイロンの事が好きだ。
そう言う事は雰囲気で分かる。
一番頼ってるのはセイロンで、フェアが今一番必要としてるのはボクでなく、彼。
セイロンもフェアの事が好きだ。
もちろん、恋愛対象として。

分かっていたから、言った。
二人で、フェアがいない今。



そう言ったボクをセイロンは眼をぱちくりしながら見つめていた。
驚いていた。

見透かされないようにやってきたつもりだ。
ボクがフェアの事、親としてじゃなく、女の人として好きだという事。
苦しかった。好きな人が自分にじゃなくて、他の人にそういう感情を抱いているのを見るのは。
でも、それでも好きだから、我慢して、応援しようと・・・思った。


そして彼は黙ったままだった。
けして目を合わそうとせず、黙々と掃除を続けていた。
彼にも思うところはあるのだろう。
龍姫さまのこと、いつかは鬼妖界に帰らなければならない事。
フェアに悲しい思いをさせたくないという気持ち。
それは多分ボクと共通の気持ち。



でも、もう遅い。
もう、充分悲しませてるんだ。
夜、一人で泣いているのを見てしまったんだよ。
セイロンって小さな声でつぶやきながら、泣いていたんだ。
「どうしたの?」と聞いたら、笑って、こう言ったんだ。

「なんでもないよ」って。











いつのまにか空には雨が降っていた。
セイロンとフェアが幸せになる事を願ったボクが見たのは、悲しく雨が降る空だった。
雨じゃなく、涙だと知るには、ボクにはまだ辛すぎた。









FIN








あとがき
セイ→←フェア←コー小説。複雑。
予定ではもっと長かったんですが無理でした辛くて書けない・・・!
セイロンも喋ってないしね。
予定ではちょっと話すはずだったけどやっぱ無理。