嫌われたくないという気持ちがそうさせた。
でも、あんな彼の姿見ていたくなかった。

そう、私は罪深い女。

言う通りにしたらいつか悪い方向に傾くって分かってたのに言う事を聞いてた。
そして勝手に愛想を尽かしちゃったんだ。

そう、私は罪深い女なの。





貴方の遺体があった場所が頭に浮かぶ。
もう貴方はジャンナに戻っていったのかしら。
涙はもう流さない。すべてティルキスに預けたから。
もう、泣かないわ。

貴方にあげた方が良いと言われた髪はおろしている。
貴方が好きだった豚汁の味付けはいつも味見をしてくれるティルキス好みの味付け。

移り変わっていく。
変わらないと思っていた想いでさえなにもかも。
貴方に好かれたくて努力したすべてが、一途に想った時間が。






「・・リアっ?アーリア?!」
「・・・え?」
目の前には豚汁を煮ている鍋。
両手には味噌が入っているおたまとそれを溶かすためのお箸。
隣には心配そうに見つめるティルキス。
「大丈夫か?ずーっと前を見つめてるからびっくりしたぞ?」
「・・・ごめんなさい。なんだか考え事をしちゃって。もう平気よ?」
あんまり心配そうに見るから謝ってしまう。 ティルキスの前だとなんとなく素直になる自分がいる。
「本当に平気か?・・・それにしてもアーリアの作る豚汁はうまそうだなぁ。」
正義感が強くて、義侠心があって、人の事を優しく思いやれる心をもってるからなんだろう。
そんなティルキスが好き。
隣にいて落ち着くの。

そう。移り変わっていく。
安らぎや安泰、欲求。
守るものが違っちゃったから私たちは進む道を分けた。
貴方は、出世。私は、仲間。

「ありがとう。そういってくれるとつくり甲斐があるわ。」
「・・・はは。まっ毎日食べたいくらいだよ。」
ティルキスの顔が赤くなったのはきっと鍋の火が少し強くて熱かったから。






きっと後悔しちゃいけない。
自分の決断は間違っていない。
私の決断によって死んでしまったアルバートに失礼だわ。

私の死んでしまった親友。
私は忘れないわ。


それが罪深い女のせめてものはなむけ。




FIN





6:罪深い私
あとがき
昔の男アルバートと今の男ティルキスを対比するために書いた小説。
罪を感じていても移り変わる思いに戸惑うアーリアが最後に思う事。
当然ですよね?
そういうのは3ヵ月後って言う風に片付けられてしまったので。
でも小説の場所は旅の途中なんですが;;